石油とカナダドルの相関関係:二つの取引ガイド
21世紀のFX取引は、業者が新技術にアクセス可能になったために変化しました。インターネットの普及が、ますます多くのトレーダーを市場にもたらし、トレーダーは世界最大市場の無限の可能性に魅了されています。
結果的に、FX業者間の厳しい競争のため、通常の取引アカウントに数多くの金融商品が加えることとなりました。通常の通貨ペアのほかに、FXダッシュボードには、石油、金、銀や他の貴金属、債券、指標、さらに他のエキゾチック商品などのようなコモディティーさえも含まれるようになりました。
そのため、FX取引は通貨だけにとどまらず、FXダッシュボードの一部の全てのことに関わるようになっています。金融市場の相関性が高まりつつある事実を考えれば、FX業者がたどってきた道は、実に論理的なものです。
時々石油市場で取引するのかと専業FXトレーダーに聞けば、否定的な答えが返ってくる可能性が高いでしょう。しかし、それは真実とはかけ離れています。
さまざまな金融市場が、直接または間接的な相関性を享受します。時としてそれはとても強力なため、一つの市場取引が他の市場取引と同じような状態になることもあります。
その完璧な例がスイスです。長い間、スイス国立銀行(SNB)はEUR/CHFのレートを1.20レベルに固定していました。ユーロに対するスイスフランの大きな高騰を恐れ、スイス国立銀行はその上限を守るために、莫大な金額を投じました。
何年もの間、EUR/CHFとこの1.20レベルは多くの議論の的でした。米ドルを含まないクロス通貨ペアとして、この通貨ペアは他の二つの主要通貨ペアの動向に影響されてきました。その二つとは、EUR/USDとUSD/CHFです。
1.20を超えてはならないラインとして設け、EUR/CHFが1.20に近づくほど、EUR/USD・USD/CHFとの逆相関性がタイトになります。言い換えると、EUR/CHFの1.20レートでは、相関度が100%となります。
したがって、例えばEUR/USD ・USD/CHFの両ペアで、強気シナリオとなるのは不可能です。必然的に、他の通貨ペアでは反対のことが起こります。
よって、その頃の取引はペッグで考えるとおかしな結果になっていました。EUR/USD取引と、逆方向のUSD/CHF取引を1回ずつ行うと、両方の通貨ペアで同じ取引を2回することに等しかったのです。
石油とカナダドル
上記のような相関性はもはや存在しません。さらにはその相関性さえも、人工的につくられたものでした。
しかし、気づかなければ取引アカウントの過剰取引の危険を引き起こすような、緊密な相互関連のある金融商品もあります。それが、石油価格とカナダドル(CAD)の相関性です。
カナダはエネルギーに左右される経済国です。カナダのオイルサンド埋蔵量と石油業界は、北半球においては最大規模の一つです。
石油業界が、大量の雇用数を抱えていることは不思議ではありません。またはその石油収益が、GDP(国内総生産)数値への影響とともに、直接経済の動きに影響します。
したがって、石油価格はカナダ経済の動きに影響します。そうして、カナダの通貨であるカナダドルの価値にも影響するのです。
FX取引では、石油価格が下落するとカナダドルも下落することは、誰もが知っています。または石油価格が上昇すれば、カナダドルも上昇します。
先述したほどの直接の相関関係はないかもしれませんが、それでもカナダ経済と石油は相関関係にあります。
石油市場の特殊性
石油は、私たちが住む世界を永遠に変えてしまいました。比較的新しい産物(100年ほど)であり、私たちが成すこと全てに劇的な結果をもたらしました。
2018年の生活に関連する商品やサービスを何か考えてみると、石油が一滴たりとも含まれないものは考えられません。プラスチック、交通やその他の多くのものに使用され、石油と石油由来の商品が世界を変えました。それも永遠に、です。
ただ、石油はコモディティーです。そのため、需給レベルによっては供給に制限があります。
通貨とは違って、石油には量に限りがあります。中央銀行は経済に流通するお金の供給を増やす決定をし、さらに紙幣を刷るかもしれません。しかし石油など他のコモディティーでは、それができません。
こうした理由で、生産と貯蔵量水準、また石油の発見が、強く石油価格に影響します。
FX取引では、石油はさらに重大です。石油はインフレ構成要素が非常に強く、中央銀行は常に、金融政策を変更する前に石油価格を考慮します。
石油価格が100ドルから30ドル未満に下落した際には、金融界全体に衝撃が広がりました。何が起こるかは、誰もが知っていました。つまり、インフレが弱まります。そこで唯一の問題は、どのくらい弱まるか?ということです。
そしてもちろん、インフレ率が下がりました。世界中で、何世代にわたっても見られなかったレベルに下落しました。
多くの場合でマイナスの領域に落ち込み、中央銀行はこの試練に向き合うため、従来の金融政策を改革または適応せざるを得なくなりました。日本銀行、北欧諸国の中央銀行、スイス国立銀行や欧州中央銀行でさえもそうしました。
石油価格が下落している間中、カナダドルには何が起こったでしょうか?カナダドルも、先述した明確な理由で下落しました。
USD/CADは1.46超に届くほど劇的に上昇したため、多くの米国人たちが国境を越えて、カナダに安い商品を買いに行きました。
そのうち、相関性は弱まるか、さらに強まります。例えば石油価格が100ドル超から下落すれば、USD/CADは30ドルを下回って変動します。
しかし石油価格が回復すると、この期間の取引(2018年第1四半期)は70ドルを超えました。しかし、USD/CADはすでにそれ以上回復していました。
しかし原理上は、これはFX取引に相関関係がどう影響するかを示す素晴らしい例です。タイミング的に時として油断はできませんが、考え方は同じです。
結論
ここでいうリスクは明らかに、石油とカナダドルの将来的な相互関係を過剰に強調したものです。先述したのでお分かりのように、コモディティーとしての石油の歴史は、比較的浅いのです。
しかし、カナダとカナダドルはその前から存在し、これからも存在し続けます。ただ、石油が今日のような主要な役割をどのくらいの期間果たし続け、石油価格がどのように変化していくかは、まだわかりません。
カナダドルと石油の相関関係は、FX取引で多くみられる例の一つです。そのため、カナダドルのトレーダーは、石油価格に影響する石油関連のニュースを考慮しなければなりません。よって、そうしたニュースがカナダドルの価値を変えます。
米国の石油貯蔵量ニュース(カナダは米国と国境を挟んで接しているため、3分の2の油脂製品を米国に輸出しています)、OPEC(石油輸出国機構)の会合、需給レベルの混乱などが、石油価格を変動させます。こうしたことが起こる限り、カナダドルの価値も変わるでしょう。
技術の躍進が、石油埋蔵を見つけて開発する新手法を提供しています。そのため、今日ではまだ開発できていないけれども、すでに判明している石油埋蔵場所(アラスカなど)に、将来的にアクセスすることも可能になるかもしれません。石油の発見や量が、石油価格とカナダドルを上下します。
この 取引アカデミーの後のほうで、通貨と他市場の間の別の相関関係を見ていきます。注目に値する相関関係は、日本円と米国の株式市場です。また他では、金と豪ドル(AUD)の相関関係です。
一つ確実なことは、今日のFX取引は通貨だけにとどまらないということです。その代わりに、金融界の複雑さを理解し、取引アカウントを守って市場変動から利益を出すために、取引戦術を適応させることです。