エリオット波動理論:異なるタイプのトライアングル
ラルフ・N・エリオットは人生の後半部分を、株式市場の動きを研究することに捧げました。エリオットは、市場が全ての感情を要約し、人間の行動が市場での悲観や楽観に反映していると固く信じていました。
楽観と悲観から説明を始めると、エリオットには、市場は人間のアップダウンのようにサイクルで展開する、という持論がありました。エリオットは、のちに最も影響がある取引理論の一つとなる文書に、全てを盛り込みました。それがすなわち、エリオット波動理論です。
エリオットは、衝撃波と修正波のようなパターンを文書化するのに、多大な時間を費やしました。衝撃波または修正波のシナリオを持つ全ての可能性に、一連のルールを設けて世に送り出したのです。
最も困難な部分は、修正波を解釈することでした。市場はほとんど保ち合い(FX取引では、市場が費やす時間のほぼ70%)に時間を割くことから、修正波がより多く形成されます。
エリオットが、衝撃波よりもずっと多くの修正波を見つけたのは自然なことです。エリオットはシンプルか複雑かという、可能性のある修正(レンジ)をすべて研究し、トライアングルが最もよく形成されることを見つけました。
FX取引におけるトライアングルと、その頻度についてはすでにご説明しましたが、エリオットほどにこうして全てを文書化した技術者は、他に誰もいません。
FX取引におけるエリオットトライアングル
修正波として、トライアングルはシンプル修正・複雑修正波の両方で出現します。さまざまなタイプをご説明する前に、ここでエリオットのトライアングル定義をざっと見てみましょう。
- 3波構造、つまり全セグメントが修正波である
- 3波構造と呼ばれながらも、5つのセグメントだけを持ち、そのすべてが修正波である
- エリオットは各セグメントの終わりに、a-b-c-d-eという文字を使用した
- a-cと b-dトレンドラインが、三角形を形作る
FX取引における、縮小・拡大型トライアングル
この二種類のトライアングルは、a-cとb-dのトレンドラインにかかっています。この二つのトレンドラインが縮小すると、チャートのどこか右側に接触します。
この接触した地点が、トライアングルの頂点です。一方、トレンドラインが拡大すると、トライアングルの頂点はチャート左側となります。FX取引における頂点とその重要線は、後ほど他の取引アカデミーの記事でご紹介します。
縮小型・拡大型のどちらのトライアングルも、下記のタイプに分類されます。
1. 水平トライアングル
a. 水平縮小型のトライアングルは、a<b<c<d<eのように、全ての脚が前の脚より小さくなる。
b. 拡大水平型トライアングルは、全ての脚が前の脚より大きくなる。よって、a>b>c>d>eとなる。
2. イレギュラートライアングル
a. イレギュラー縮小型トライアングルは、b波が5つのセグメントで最も長いことを除けば、水平縮小型トライアングルと同様に見える
b. イレギュラー拡大型トライアングルの場合、b波が5つのセグメントで最も短い
エリオットはまた、拡大型・縮小型の両方でさまざまなトライアングルのバリエーションも区別しましたが、FX取引では形成されることが稀なため、ここではあえて言及しません。エリオット波動理論が、1940年代に株式市場で発展したことに留意してください。
のちの70年代に、他の技術者が、新しい市場の現実性と変動性にエリオット波動理論を適用しようとしました。依然として、当時FX取引は大衆に利用できるものではなく、主要通貨の過去の価格でさえも希少性がありました。
したがって今日の現実においては、FX取引における拡大型トライアングルの形成は極めて稀です。その代わり、水平縮小型とイレギュラートライアングルはより頻出し、市場が保ち合いをする際のお気に入りの方法となっています。
トライアングルの特殊タイプ
エリオットは、トライアングルが時として複雑な形で出現するのを見つけ、他の技術者は、それを異なるパターンとして文書化することを選びました。例えばこの取引アカデミーでは、最も有名で影響力のある反転パターン、ヘッド・アンド・ショルダーとして取り上げています。
エリオットの眼には、ヘッド・アンド・ショルダーは縮小型トライアングルとして映っていました。上述したトライアングルではなく、特殊なタイプのトライアングルです。
エリオットは、a-cトレンドラインに影響する「イレギュラー性」のトライアングルのいくつかの形を見つけました。経験則から言うと、トライアングルの二つのトレンドラインの間であるb-dがトライアングルの最後となるため、最も大切です。
こうして、特殊タイプのトライアングルは、エリオットがa-cトレンドラインに置き換えた方法として参照します。それは、a-eまたは c-eベースラインにトライアングルが形成されることによるものでした。
言い換えると、b-dトレンドラインのルールに従う一方で、エリオットはオリジナルのa-cトレンドラインを、三角形の形を保持するよう適用した、ということです。
ヘッド・アンド・ショルダーパターンに戻ると、下図が最も純粋なヘッド・アンド・ショルダー表示でなかったとしたら、何になるでしょうか?
これもエリオットの眼には、ほかでもないトライアングルに移りました。縮小型トライアングルです。
パソコン(PC)がなかった時代に、一体エリオットはどうやって全てを一つにまとめあげたのか、と疑問に思うことでしょう。この理論の美点は、4分の3世紀経った今でも、FX取引の予測方法として使えるという点です。
FX取引における制限トライアングルと無制限トライアングル
エリオットは、いくつかのトライアングルが独自の機能をしていることを見つけました。制限された値動き、または無制限の値動きを追っていることを示しています。
そうして、制限または無制限トライアングルの区分がただ自然と出現しました。エリオットによれば、制限トライアングルはジグザグのb波、または衝撃波の第四波のどちらかを形成しています。
どちらの場合も、パターンはすぐに終わります。衝撃波の第五波またはフラットのc波が、それぞれのパターンを完了します。
制限トライアングルの場合、下記に注目してください。
- b-dと a-cトレンドラインに混じりけがない、つまりトライアングルのセグメントのいかなる部分にも交差していない
- どんな状況下でも、価格はb-dトレンドラインをリテスト(トレンドラインを意識した動き)しない
無制限トライアングルの場合は、
- b-dと a-cトレンドラインは、トライアングルのどこかのセグメントと交差していなければならない
- 価格がb-dトレンドラインをリテストする
最初に、トライアングルのブレイクに続いた動きが反転しているかを見てください。次に、新しいトレンドが新たなエリオット波動サイクルを始めているかどうかを見ます。
結論
エリオット波動理論の縮小は、理論を使用した門下生たちが、自身の取引ニーズに適用してしまったためです。エリオットが理論ルールを設定した際に研究したのは、株式市場だけでした。そして、いくつかのコモディティが異なるパターンとして文書化されました。
最近では、10の異なるエリオットトレーダーがいれば、同じチャート上でも異なるカウントになる、とも言われています。この理論が現在の金融取引商品に適用されるよう、さまざまな形式で存在しているため、これは自然な流れです。
あるトレーダーは、5つのセグメントを数えられたら、それは衝撃波の動きだとしています。そうしたトレーダーは、目立つ必要のあるエクステンションの必要性をすぐに忘れてしまいます。エクステンションがなければ、そこに能動的な衝撃波はありません。
また他のトレーダーは、第二波と第四波を重複させてしまい、エリオットが衝撃波を重複させることを厳しく禁じたオリジナルの作業を忘れています。こうした例がいくつも続くのです。
しかしどの新アプローチも、新しい議論に裏付けられているものです。エリオット波動が、比較的新しく変動の激しいFX取引では機能しない、という議論が最高峰のものです。
それは非常に間違っていますし、理論を理解していない、あるいは理論を使って取引する時間のないトレーダーの言い訳です。一つ確かなことは、テクニカル分析の歴史上、金融市場の全変動を、その概念から現在のレベルまで解釈したエリオット波動以外の理論は一つもない、ということです。