FX取引:中上級レベル

中上級
Trading101
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Duration 20 時間

フィボナッチとエリオット波動

エリオット波動理論は、衝撃波と修正波を解釈するために、様々な通貨ペアにおける変動サイクルを見つめます。エリオットは、自らが文書化した複数のパターンをもとに独自の論理プロセスを用い、これまで創られた中でも、最も包括的な取引理論を打ち立てました。

この理論が人間の悲観、楽観、恐れや貪欲さといった感情を組み込んでいるために、現代のFX取引や他の金融市場を占拠しているロボット主導の活動には影響がありません。取引アルゴリズムでさえ、人間がつくったものです。よって、ロボットでも間違いを犯す傾向があります。

どんなテクニカルアナリストとも同じように、エリオットはその時代に知られていたものを使用しました。エリオットは1900年代初頭の理論に展開し、他と比べて突出している一つの特徴があるおかげで、エリオットが展開した論理プロセスにある全要素を結び付けやすくなりました。

それがフィボナッチ数です。フィボナッチシリーズがエリオット理論の基礎である、と述べるのは馬鹿げたことではありません。

フィボナッチ数列について馴染みの薄い方へ少々ご説明すると、前の2つの数字を足すと、すぐ後の数字となる数列のことです。

エリオットは自身の波動理論を発見する前、フィボナッチ数列など聞いたことがないと主張していたものの、この偶然の一致は驚くべきことです。

FX取引のエリオット波動におけるフィボナッチ比率

最も大切なフィボナッチ比率は61.8%で、黄金比とも呼ばれます。この黄金比は歴代の数学者や、さまざまな分野の専門家たちを長年魅了してきました。

今日にいたるまで、フィボナッチ比率は、葉やカタツムリの殻のらせん状の配置が、常にこの不思議な61.8%となる神秘を示しています。歴史上の記念碑、有名な絵画や描画(例えば、レオナルド・ダ・ヴィンチの「ウィトルウィウス的人体図」)にフィボナッチ比率が見られ、人類はこれを説明しようとしてきたものの、ほとんどが失敗に終わりました。

こうした理由で、エリオット波動にとって不可欠なものが黄金比だということは、ほぼ非現実的です。下記は、黄金比がエリオット理論の論理プロセスにどう影響を及ぼすかを何点かまとめたものです。

- 61.8%のリトレースメントレベルが、ジグザグとフラットの違いを生み出す。

  • 修正波のb波が61.8%以上リトレースする場合、そのパターンはフラットである。即座にできる推測は、前のa波が修正波だということである。
  • 一方で、b波のリトレースレベルが61.8%以下である場合、そのパターンはジグザグである。自動的に、前のa波は衝撃波だと推測できる。

したがって、黄金比61.8 %を超えるか、それ未満の単純なリトレースメントが、市場の前の変動におけるエリオット構成を多く物語る。

- 同じく61.8%のリトレースメントレベルは、市場変動で衝撃波の第二波に見られることがほとんどである。よって、トレーダーが第三波を予測し、ロングまたはショートまで61.8%を待つのは自然なことである。

最近のEUR/JPYの日足時間枠は、黄金比が衝撃波の性質を形成する方法の例として完璧なものです。

最安値を打ったあと、このクロス通貨ペアは何とか大きな持ち直しをしてみせました。しかし失速し、その後に修正の動きが続きました。

熟練したトレーダーは、次に何をすべきか前もって分かっていました。つまり、フィボナッチ・リトレースメント・ツールを選択して、黄金比61.8%を見つけました。完璧な取引は、前の衝撃波の開始時点にストップロスをかけつつ、その61.8%レベルでロングし、この取引に適するリスクリワードレシオ(1:2または1:3)を狙うということです。

- FX取引で黄金比が関わる別の素晴らしい設定は、エクステンション(延長波)です。エリオットによれば、どんな衝撃波にも最低1つのエクステンションがあります。そしてエクステンションの定義は、前の最初の波の161.8%より長いことです。よって、やるべきことは、フィボナッチ・エクスパンション・ツールで最後の波を測り、他の黄金比を見つけて、ターゲットを設定することです。

前に示したEUR/JPYですが、この通貨ペアは161.8%のエクステンションに達していませんでした。よって、第三波が終わったとは言えません。

どんな場合においても、資金管理ルールは、利益を確保するため、ストップをトレール(追跡)しない場合、最低でも収支が合う価格でストップ注文をかけることです。

エリオット波動理論を使ったFXにおけるその他のフィボナッチ比率

61.8%の比率は、エリオット波動理論だけに使用されているわけではありません。実際に、エリオット理論がフィボナッチ比率を完全に組み込まなければ機能しないのと同じように、さまざまな比率が特定パターンを定義づけています。

下記に、フィボナッチ比率がFX取引の波のカウントに役立ついくつかの点をまとめました。

  • ジグザグのb波は、一般的に23.6%から38.2%の間でリトレースする。もしb波が50%に向けて何とか変動しようとしているなら、このパターン全体はジグザグの可能性が低い
  • イレギュラーフラットのb波は、前のa波の123.6%を超えてはいけない
  • イレギュラーフラットのc波は、前のb波の138.2%を超えてはいけない
  • 通常フラットのc波は、前のb波の138.2%を超えてはいけない
  • bフェイラーを伴うフラットのc波は、前のb波の138.2%を超えてはいけない
  • ランニングフラットのb波がa波の161.8%を超えていれば、c波はa波に似せている
  • 衝撃波の第四波が、前の第三波の38.2%を超えるリトレースをすることは稀

エリオットによって示された他のパターンから、他の多数の例を挙げ続けることは可能です。トライアングルまたは複雑修正のセグメントもまた、フィボナッチ比率を用いてタイプを定義づけています。

結論

フィボナッチ比率は、テクニカル分析で幅広く使用されています。フィボナッチ・リトレースメント・ツールだけを使い、市場変動を徹底的に測定し、61.8%のリトレースメントレベルで反応を示すトレーダーもいるほどです。

これと同じようにやってみることを提案します。どんなペアでもいいので通貨ペアを決め、月足チャートを設定してください。次に、市場の左から右に最長セグメントを測定し、23.6%、38.2%、61.8%の地点に印をつけます。偶然か必然か、市場はこうしたフィボナッチレベル周辺で反応するでしょう。

エリオットは、他のどんな理論もしなかった方法で、フィボナッチ比率を組み込みました。エリオットが生きていた時代と、その当時で利用できたツールを考えると、エリオットの功績は非常に大きなものです。

エリオットの死後、多くのテクニカルアナリストが、エリオットの市場予測方法を使い続けました。エリオット波動理論だけを使って、大人数にむけて何十年間も予測サービスもあります。

しかし時間の経過とともに、市場は変わりました。エリオット原理は変わらなかったものの、このために、多くの人が、エリオット原理は時代遅れだと考えています。

それが本当であるかどうかは、誰にも実際にはわかりません。ただし一つ確実なことは、他のいかなる取引理論や戦略とも同様、エリオットのアプローチは資金管理システムなくして機能しないという点です。

エリオット波動理論で波を数えることは時間のかかるプロセスであり、FX取引には分析すべき多数の通貨ペアが存在します。ですから、興味のある通貨ペアを選んで、必ずトップダウン分析でアプローチをし、最も有望なリスクリワードレシオと成功の可能性がある設定のみ、取引を行ってください。

他の取引理論も、フィボナッチ比率をうまく使っています。ガートレーは自身の有名なパターンを、フィボナッチ数をもとに開発しました。後に、テクニカル分析ではまったく新しいハーモニック取引セクションが登場しました。

W.H.ギャンだけは、フィボナッチ比率を使用しませんでした。その理由はいまだに分かっていません。おそらく市場を予測するのに、フィボナッチ数列の科学的な価値よりも、占星術や数秘術のほうに魅了されたのでしょう。