FX取引:中上級レベル

中上級
Trading101
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Duration 20 時間

ECB記者会見とそれから何を得るのか

ドイツのフランクフルトに本拠地を置く欧州中央銀行(ECB)は、ユーロというFX取引で最も人気の高い通貨の一つに対する金融政策を定めます。19ヶ国の共通の通貨であるユーロは比較的新しいものです。

他の大陸に比べると比較的小さな規模であるヨーロッパには、たくさんの国と国籍があります。このことが、経済的な視点からみても、政治的な視点からみても問題であることは歴史を通じて証明されてきました。

長年にわたり、あまりにも多くの戦争が起こり、ヨーロッパを荒廃させてきました。欧州連合(EU)が生まれた理由の1つは、地域に安定性をもたらすことでした。そして経済的な視点から、国際協定でよい取決めをするブロックを創出するためです。

今日、ユーロ圏の経済規模は、世界で2番目であり、それよりも大きな規模を誇るのは合衆国だけです。欧州プロジェクトは、大陸統一という結果となりましたが、経済大国を産むことになり、多数の他国の羨望の的となりました。

すべては、経済通貨同盟(EMU)創設を決定した1988年に始まりました。欧州内で資本が自由に動き、欧州諸国全体で共通の金融当局を持ち、同じ金融政策を取るという考えでした。

言うは易く行うは難し。各国の経済は異なります。何年にも渡り、ドイツやオランダのような北の諸国は、イタリア、スペイン、またはギリシアのような南の諸国よりも大きな成長率を享受しました。

このため、すべての経済条件を含む同じ金融政策の設定が、ECBのハードルとなりました。1999年1月に導入されて以来、ユーロは19ヶ国3億人を超える人びとの共通の通貨です。

したがって、すべての地域で価格の安定を維持するというECBの仕事は、世界のすべての中央銀行にとって最大の課題であることが判明しています。金融政策を設定する時に、ECBと同じ問題に直面する中央銀行は他にはありません。

たとえば、ドイツはユーロ圏経済の原動力ですので、ドイツに独自通貨があったとしても、その金利は今のユーロの金利よりもはるかに高いでしょう。このため、ユーロ圏とユーロにチャンスをあたえるものはほとんどありませんでした。

歴史も助けとなりませんでした。時の試練に耐えた通貨同盟は存在しません。すべて最終的に崩壊しました。

しかし、今日のユーロはユーロ圏19ヶ国の法定通貨です。そして、ユーロは欧州の統合と繁栄のシンボルとなりました。

FX取引に関する欧州中央銀行(ECB)記者会見

以前の記事では、中央銀行が主要金融政策ツールの1つとしてフォワードガイダンス原則を活用していることを述べました。記者会見はこの原則の一環であり、ECB記者会見は、多くの注目の火付け役となるものです。

おそらく、全世界、特にユーロ圏に影響を及ぼした2008年金融危機のためです。ユーロはかつて(そして今でもまだ)歴史が浅く、最初の国際金融危機を生きのびられるかどうか、誰にもわかりませんでした。

米国の住宅バブルは世界中に速やかに広がり、犠牲者は遠くアイルランド、スペインにも及びました。金融市場は、ECBはリスクを食い止めることなどできないと予想して、ユーロを売りました。

さらに、ギリシアが欧州連合(EU)とユーロ圏を破綻させそうになりました。密室の中で、終わりなき集中協議と欧州首脳会議が開催され、FX取引を行うことは、その当時は本当に冒険でした。

とはいえ、こういったすべての悪い時代を通じて、ある存在がすべてに立ちはだかり、期待通りの仕事をやってのけました。それがECBです。そして、その金融政策を表現する最善の方法は、昔も今も、記者会見です。

ECBは以前、毎月、金融政策会議を開催していたものでした。何年にもわたり、毎月第一木曜に、ECBは今後1ヶ月間の金利決定と金融政策を発表していました。

そして、毎回、会議の後に、記者会見が開かれます。長年、ECBの金利決定と記者会見が行われる週は、FX取引で最も忙しい週の1つでした。

それが特に当てはまったのは、会議が米国の非農業部門雇用者数(NFP)の一日前に行われた時でした。もはやそうではありません。

Fedの例にならって、ECBは今では毎月ではなく、6週間毎に会合を開いています。米国市場が始めるちょうどその時に、ECBは金利の決定を発表します。

しかしながら、45分後に開かれる記者会見があらゆる注意を引きます。ECB総裁は約20分かけて声明を読み上げ、その後、世界中の記者が質問します。

フォワードガイダンス原則の一環である、ECB記者会見は価値のあるコミュニケーションのツールです。ECBが何かを強調したり、誤解の余地をなくしたいと願う時は、時々、記者会見前に金利発表に数語を追加します。

たとえば、ECBが金利をマイナスに引き下げる時は、金融市場にとっては重大事でした。その規模の中央銀行が、先例のない金融政策に乗り出すのを発表するのは簡単ではありませんでした。

したがって、ECBは行動を起こしただけではなく、記者会見中に、さらに緩和を行う予定だと発表しました。市場参加者が最初の発表に過剰反応しなかったように、ECBが詳細を提供できるようになるまで、市場は沈静化しました。

連邦公開市場委員会(FOMC)の声明と比べると、ECBは記者会見の前に声明を出すことはありません。そのため、記者会見の前半は注意深く精査され、タカ派、ハト派、中立的など、どのような言葉が使われているか検討されます。そして、前回の会議と比べて、もし変更が行われるなら、どんな変更なのかも検討します。

ユーロペアはまったく何もなくても、大きく変動しました。インフレが的中するか的中しないか、あるいはGDP(国内総生産)の増減に関するヒントがわずかでもあれば、ユーロはまたたくまに数十ピップ移動します。

このため、ECB記者会見の前半では、FX取引環境で乱高下が最も大きくなります。そしてその後、Q&Aセッションが始まります。

ここで問題となるのは、どんな質問がされるのか誰も知らないということです。また、答えもわかりません。

したがって、ECB総裁がどのように状況を処理するか、金融メディアがどんな反応をするか、質問がどれほど鋭いものであるかなどによって決まります。加えて、時に金融メディア記者は、総裁が答えられないとわかっている質問をしますが、記者はそれでも何らかの回答を得たいと願っています(たとえば、ユーロの力をどう思いますか?など) 。

記者会見が終わるまでに、ユーロはすでにすべてのチャート上で大きなダメージを引き起こしています。ECBはできるだけ乱高下をおこさないようにしようとしますが、時として、FX取引でそれは単に不可能です。

結論

ECB記者会見は、ユーロ圏の金融政策をハイライトするために使われる第一のコミュニケーションツールです。エコノミストとECBウォッチャーは文言、トーン、声の調子などを観察し、ECBが何を言わんとしているのかを解釈します。

疑わしい時は、記者は質問をします。メッセージが誤解されていると総裁が感じれば、時間をかけて特定の話題やテーマについて回答します。

FX取引で重要順に経済イベントをあげるのであれば、ECB記者会見が一番先にあげられます。米国の連邦準備制度(Fed)の決定と記者会見と共に、ECB記者会見はどんなFXトレーダーでも逃したくない公式発表です。

ECB記者会見中に、市場で間違った側にいれば、大きな損害がもたらされます。