市場を動かす存在
金融市場の誕生以来、トレーダーは市場を動かす存在に魅了されていました。価格変動の原動力は何なのか、それらを解釈して理解する方法があるのか、どのようにして利益が出せるのでしょうか?
こうしてテクニカル分析が生まれました。トレーダーの関心は価格パターンの解釈に至り、そのほかに取引理論の登場などがありました。次に分かるのは、FX取引が登場し、取引アルゴリズムとロボットが価格に影響を及ぼしていることです。
金融市場はさまざまな理由で変動します。昨今では、FX取引または株取引だけに目を向けることはできません。金融市場はお互いに繋がっているため、1つの市場を動かすものが全市場を動かすからです。
この記事の狙いは、FX取引を行う際に着目すべき点を浮き彫りにすることです。しかし、こうした要因は上述したように、外為市場だけに影響するのではありません。そうではなく、変動の程度に違いがあるだけで、全ての金融商品が反応を示します。
市場を動かす存在
価格が変動するときはいつでも、そこに理由がなければなりません。金融市場では、その理由は需要・供給の水準にあります。
需給の不均衡はつぶさに観察されています。買い手が数の上でも、出来高の上でも売り手を上回れば、価格は上昇します。
需要がなくて価格が変動したことは、市場の歴史上、一度もありません。人生の他の領域においても、このことは当てはまります。
例えば住宅市場を考えてみてください。価格が高騰を続ければ、人々はすぐさまバブルだと騒ぎます。
けれどもご存じのように、市場は需給バランスを反映しているだけです。その水準で商品需要がなければ、価格は高止まりしないでしょう。
人為的な価格は長く持ちません。しばらく存在するかもしれませんが、結局市場は本当の価格を示します。
FX取引でも同じことです。価格がコンフルエンスエリア(異なる時間足のチャートで引いたフィボナッチの重なり合うゾーン)に達すると、数回ブレイクしようとします。
そうする時には、時間が消費されます。トレーダーはすぐに市場のためらいに気づき、それを確定する反転パターンを探します。
ここでは本当に市場を動かし、特にFX取引に影響を与える「主体」と要因をあげます。
1. 市場の他の参加者
市場の他の参加者とは、個人トレーダー以外の市場プレイヤー全員を指します。その動向はFX取引の需給水準に影響しますが、個人トレーダーの動向は影響しません。
結局のところ、数の問題です。個人トレーダーがFX取引全体の一日の取引高で占める割合は、約6パーセントです。
数字にすると、毎取引日に流通する5兆ドルのうちの6%です。通貨ペア変動に影響を及ぼすには、これは非常に低いパーセンテージです。
よって、FX取引においては、個人トレーダーはフォロワー(従う存在)であって、インフルエンサー(影響を及ぼす存在)ではありません。市場の他の参加者は中央銀行、商業銀行、仲買人やリクイディティプロバイダー、機関投資家や富裕層ポートフォリオを運用するファミリーオフィス、高頻度取引業界などです。
こうした存在の全てに関してはこの取引アカデミー内で取り上げてきましたので、ここでその影響力を振り返るのには良いタイミングです。このセクションではFX取引における、または通貨ペアの変動方法における個人トレーダーの影響力を示す狙いがあります。それはゼロか、ほぼゼロです。
2. 米ドル
ええ、そうです!米ドルは金融市場変動のカギです。
今日の金融市場ルールを敷いたブレトンウッズ体制の発足以来、米ドルが持つ世界取引での影響力は大幅に増えました。
このことは、米国政府が金米ドルの直接の交換をやめた1971年のニクソンショック後に、まさに言えることです。その時から、米国がペトロダラー(オイルマネー)を通じて、巨額の貿易赤字を埋める方法を見つけたため、中央銀行や法定通貨への信用が全てになりました。
最近では、米ドルは世界の準備金となっています。つまり、ほぼ全ての国際取引(全てではなくとも、かなりの数)は米ドルで行われています。
また、国際的な負債やローン市場も米ドルで動いています。さらに、国家と州は余剰準備金を自国通貨ではなく米ドルで保持しているとも、米ドル紙幣には多くの信頼を寄せられていることがいえます。
以上すべてが理由となり、米ドルは市場を動かす主な役割を担っています。米ドルが変動しないと、どこででもレンジ相場となり、トレーダーが中長期的な見地を持っていれば、FX取引は退屈なものになります。
ここで重要なことを1つ挙げるなら、トレーダーは米ドルとDXY(ドル指標)の違いを明確にしなければなりません。DXYは、わずかな通貨バスケット(ユーロ、日本円、英ポンド、カナダドル、スウェーデンクローナとスイスフラン。この全通貨がFXダッシュボード上にあるわけではありません。豪ドルのような重要な通貨、または新興市場は含まれていないので、DXY変動をもとに判断するFXトレーダーは通貨構成を認識しなければなりません)に対してのみ発展を見せています。
3.米国の連邦準備制度(Fed)
米ドルの金利決定機関が、米ドルの価値の鍵を握っています。よって、連邦準備制度は金融市場、特にFX取引市場を動かす存在としてはトップに挙がります。
世界中のトレーダーが、連邦準備制度の決定と実施を非常に注意深く見ています。そして、それはトレーダーだけではありません。
あらゆる種類の政策立案者が、連邦準備制度が何をもくろみ、金利水準および金融政策の変更がどのように自国経済に影響するかを解釈しようとします。連邦準備制度は自分達の影響力と、米ドルに対する金融政策が経済戦争にどのように使われる可能性があるかを十二分に認識しています。
当然ながら、そのようなことは使命の一部ではなく、言及することはできないため、そのようなことを認める者はいないでしょう。しかし、例えば連邦準備制度の最近の一連の動きを考えてみてください。
連邦準備制度は米ドル金利をほぼゼロから約2%に引き上げ、経済循環の引き締めを開始しました。それと同時に、ポートフォリオに保有している巨額の国債を売ることで、バランスシートを縮小させるためあらゆるプロセスを行っています。
そのようにして、連邦準備制度は国際金融システムから米ドルを効果的に吸い上げ、引き締め効果を2倍にしています。こうなってしまうと、各国家は入手しづらい通貨で自国の負債を支払わなければなりません。よって、米ドル買いの圧力が全取引所で大きくなり、最終的にFX取引にもドル買い圧力が見られることになります。
結論
この記事で触れたものや機関に、FX取引のすべての変動の責任があるわけではありません。しかし、変動の多くの責任を負っており、トレーダーはそれを無視することができません。
トレーダーは、米ドルと連邦準備制度の行動に何が起こっているかについて最新の情報を得て、金融市場のしくみと何が本当に重要なのかを理解するようになっています。
もちろん、他の中央銀行も変動を作り出します。欧州中央銀行(ECB)や他の主要中央銀行が金融政策を変えると、ユーロ通貨ペアの変動レベルが大きくなります。
他の中央銀行が行動を起こすときも同じです。しかし、結局のところ、反応は「地域的」であり、FX取引に対する影響は「局所的」です。
改めて言いますが、米ドルと米国の連邦準備制度が設定する金利に、すべてが依存しています。その他のことは、ただ一時的なノイズに過ぎないのです。