大多数のトレーダーが見落とす重要な経済データ
FX取引では、市場参加者は通貨の変動から利益を得るために通貨ペアを売買します。ペアはFXダッシュボードを形成し、このダッシュボードには仲介業者の提供するマーケットで提供している全商品が表示されるでしょう。
ペアを作る2つの通貨は、2つの経済を表します。言い換えると、ほとんどの通貨の場合のように国、または、経済地域(例えば、ユーロやユーロ圏など)を示します。
市場参加者の課題の1つは、一国の経済発展を解釈して、それが成果を遂げているか、いないかを見極めることです。ファンダメンタル分析と呼ばれるプロセスは、強気か弱気の傾向の結果を導きだします。
ファンダメンタル分析のプロセスでは、経済カレンダーは利用できる重要なツールです。関連する全ての経済データは、事前に分かっており、トレーダーは経済ニュースの潜在的な影響について考えさえも持っています。
しかし、FX取引では、市場は想定されている様に常に反応しません。例えば、予想以上の非農業部門雇用者数(NFP)の数字が発表されても、米ドルは必ずしもプラスに反応するとは限りません。時には下落することもあり、誰もなぜなのか理解できません。
この供述の後半部分は、厄介なものです。トレーダーとして、価格の動きの背後には常に論理があると考えなくてはなりません。
トレーダーによると、市場はトレーダーが支払い能力を維持できる以上に、不合理にとどまることがあると言います。しかし、市場がFXトレーダーの振りに動く要素があるために、そのようなことが起こるのではなくて、トレーダーがなぜ市場がそのように反応するのか、その理由を理解していないからです。
ファンダメンタル分析に使用する過小評価された経済データ
誰もが次のような諺を聞いたことがあります。「悪魔は細部に宿る」。FX取引では、小さな内容が正しいか、間違っているかの差異を生みます。あるいは、経済データを正しい方法で解釈することをです。
ほとんどの個人トレーダーは、経済ニュースと共に発表される見出しに焦点を当てており、リリースされた全てのデータを詳しく見ている人はほとんどいません。経済データが出た際に、内容を見るために実際に「ほんの少しかじる」ことに時間を取るトレーダーはほとんどいません。
ここに、ほとんどのトレーダーが見逃している、過小評価された、また隠れた経済データのいくつかの例を挙げます。
1. 非農業部門雇用者数(NFP)改訂値
NFPはNon-Form Payrolls(非農業部門雇用者数)の略で、米国の労働省によって発表される主な雇用データです。米国連邦準備制度(Fed)は、雇用創出がフェデラル・ファンド金利(FF金利)を動かす理由と考えているため、誰もがNFPの数字に注目します。
この極めて重要な経済データの解釈は簡単です。優れた数字が出れば米ドルの純利益はプラスであり、予想よりも低い数字が発表されると、ドルに打撃を与えます。
しかし、たいてい見逃されてしまうものの一つが、改訂値です。
かなりの頻度で、労働省は以前発表したNFPの改訂値を発表します。2カ月以上を遡る改訂が大なわれることはめったにありませんが、誰も決して分かりません。
ここに改訂値が相場の動きにどのように影響するかの例を挙げます。米国経済が123,000人の雇用を創出すると予想されているとしましょう。
標準的な解釈では、これよりも大きな数字がでれば、米ドルにとってプラスになります。数字が低いと、失望感を示し、アルゴリズム取引は米ドルを売ることでしょう。
さて、実際のリリースが139,000人だとしましょう。したがって、実際の数値が予想された数値を上回り、初期反応は米ドルの価値の上昇です。
しかし、改訂値は最初の市場反応を弱める大きな理由を提供するため、常に改訂値には注意を払ってください。仮に、前月の数字が34,000人減、そしてそれよりも前の月が更に15,000人減の改訂がされた場合、実際発表された139,000人から差し引いた、合計でマイナス49,000人になります。
したがって、139,000人の追加ではなく、米国経済は90,000人を追加しただけで、当初予測された123,000人よりはるかに低い数値です。したがって、好調な雇用報告ではなく、悲惨なものに終わり、米ドルは上昇するどころか、暴落するはずです。
陰謀理論を支持する人は、これが米国のデータ操作方法だと言います。NFPの全ての報告を徹底的に調べる人はわずかで、見出しだけで取引するため、このような議論の背後にある考えは、悪いものではありません。陰謀がこの策略の背後にあるかどうかに関わらず、私たちには決定権がありません。
2. コアインフレと個人消費支出(PCE)
中央銀行はインフレを金利の主要な推進力と考えています。インフレ率が高いほど、金利は高くなり、インフレ率が低下すれば、中央銀行が金利を引き下げます。
ユーロ圏(米国に次ぐ第2の経済諸大国)や米国などの主要経済国では、消費者物価指数(CPI)が毎月発表されます。これは前月の商品やサービスの価格の変化を示しています。
CPIが出ると、トレーダーは熱狂します。なぜなら、トレーダーはCPIが中央銀行からのタカ派、あるいはハト派の声明の誘因として解釈するためです。しかし、それは焦点を当てるべきインフレデータではありません。
例えば、米国連邦準備制度(Fed)の場合、PCEはインフレ状況をより明確に示す指標です。さらに、エネルギー価格を除いたコアPCEは支持されています。
PCEはCPIよりも強く動きます。CPIは変動が大きくなる傾向があり、時にはヘッドライン・インフレ(総合インフレ率)の上昇または下降を示し、トレーダーはニュースに従って売買に飛び込みます。
しかし、経験豊かなトレーダーはPCEに注目します。予測と一致していれば、Fedは一時的なものとして見なすため、CPIデータは無視されるべきです。
ユーロ圏でも同じことが起こります。欧州中央銀行(ECB)はインフレを(2%以下かその近辺で)食い止めることを任務としていますが、その任務で重視するのは、EU基準消費者物価指数(HICP)です。
しかし、ECBが考慮する正しいインフレデータは、エネルギー価格を除いたコアインフレです。
3. 石油価格
エネルギー価格といえば、石油価格は大きなインフレを誘発する構成要素です。世界の全ての中央銀行は、物価安定に影響を与える石油市場の発展に注視しています。
石油とインフレの関係は、誤解の余地がほとんどありません。石油価格が下がればインフレが低下します。経済学の研究では一定のインフレを支持し、通常の経済成長の刺激と見なします。
そのため、中央銀行は、金利をかなりの前から切り下げることによって、インフレの将来の落ち込みを予想しようとします。そして、その唯一の理由は石油価格の下落です。
その結果として、石油価格が上昇すれば、中央銀行からのタカ派の声明が起こります。インフレ率は上昇し、金利も上昇するでしょう。
結論
この記事で使われた例はほんのわずかです。見逃されているデータは、どこにでもあります。
トレーダーは、将来のNFPリリースを解釈するために、ISM製造業景気指数とISM非製造業景気指数の雇用要素を使用します。あるいは、失業率報告書に説得力があるか、ないかを確認するために、労働参加率を見ます。
さらに、地政学的緊張が石油価格に影響を与えます。石油輸出国機構(OPEC)会議もまた、石油価格に影響を与える傾向があります。よって、インフレは上昇するか、下降し、中央銀行の任務、そして、最終的に金利に影響を与えます。
これら全てのことなどは、普通の個人トレーダーにはほとんど知られていない情報です。しかし、ファンダメンタルな視点からのFX取引は、価格に影響を与える全てのものを理解することを意味します。
市場が「不合理な」方法で動くとき、おそらくトレーダーはその理由を単に理解していないのです。結局のところ、市場がいつも正しいのです。