遅行線(遅行スパン)の利点
FX取引とテクニカル分析で一般的にもっとも不可解な指標の一つが、一目均衡表です。この素晴らしい指標については、すでに2、3の記事をあげてご説明しましたが、この記事がシリーズ最後となります。
現時点では、一目が意味するところをご説明した前の記事を読むと役に立つでしょう。下記にその要約を挙げます。
- 一目均衡表は、トレンド指標としてもオシレーターとしても機能する
- 将来と過去の価格の間の均衡状態を示す
- 将来の支持(サポート)と抵抗(レジスタンス)レベルが形成されるずっと前に予測する
一目均衡表には、下記のような要素があります。
- 先行スパン1と先行スパン2
- この2線が雲を構成し、雲は下記のことでも知られる
- 先行スパン1が先行スパン2の上部でクロスすると、雲は強気となって、トレーダーは将来の支持帯で買いを考える
- 先行スパン1が先行スパン2の下部でクロスすると、雲は弱気となって、トレーダーは将来の抵抗帯での売りを考える
- 基準線と転換線
- 2つの移動平均線と似ているこの基準線と転換線は、一目均衡表でのトレンド相場を示す
- トレーダーはこの2線を、トレンド相場での移動平均線と同じ方法で使用する
- 遅行線(遅行スパン)
非常に多くのトレーダーに大部分を誤解されている遅行線には、素晴らしい特質があります。そのため、遅行線の見地からチャートを見る方法を、この記事全体でご説明する価値があります。
しかし何よりもまず、トレーダーはどこで遅行線を探すかを確実に分かっていなければなりません。残念なことに、MT4プラットフォームは一目均衡表の指標の初期設定で酷い色使いをしています。
下のチャートがお分かりでしょうか?どれが遅行線か推測してみてください。緑の線です!よって、分析と解釈はかなり難しいものとなっています。
幸運なことに、これは簡単に直すことができます。下図は遅行線を黒に変え、もっと見やすくしたものです。
遅行線を解釈する
時価を使う理由は、一目均衡表が明らかにするように、均衡状態を示すためです。このUSD/CADの日足チャートで価格の位置を見て、その左右をチェックしてみてください。
右側に雲があります。現行では弱気の設定で、雲は将来の価格へ抵抗を示すことになっています。
現在価格の右側に、26期間によって表示されています。あるいは、この場合、26日間です。
現在価格の左側には遅行線があります。過去26日間、またはこの場合、26日前の現在価格と同じレベルを示します。
したがって、現在価格は遅行線と雲の極致レベルの間の均衡スタンスで位置しています。
これは大切なことで、一目均衡表をもとに過去データによる検証を行う際には特に重要です。トレーダーは、いつでも下記の3つの変数に集中しなければなりません。
- 問題となっているローソク足(現在価格と同等)
- 26日前の遅行レベル
- 雲の極致レベル
これで初めて、一目均衡表の解釈が理にかなうことになります。
また、遅行線に似せた値動きにも留意してください。ただし、遅行線は実際のローソク足の実体によって移動した距離を示しているだけです。
上のチャートを見てみましょう。表示されているローソク足は、長く低い影を持ちながらも、比較的小さな実体です。
復習ですが、実体とはローソク足の始値・終値間の開きを示しています。陽線であれば緑(日本では赤や白が多い)、陰線では赤(日本では青や黒が多い)の実体となります。
実際のローソク足が価格の届いた最低レベルを示しているのに対し、遅行線は実体を追跡するのみです。ローソク足形成の間であっても、遅行線はそのレベルを示しています!
言い換えると、遅行線にとって大切なのは始値と終値のみです。
価格を避ける
遅行線の主な特徴は、価格を避けることです。より正確には、前にあるローソク足を避けるということです。
そのためトレーダーは、遅行線をトレンド指標と、力強い支持・抵抗レベルを示すトレンド指標の両方で使います。
トレンドが形成している状況では、遅行線はいつでも実際のローソク足の上か下にあるでしょう。遅行線が26日前のものであるため、ローソク足が常に上か下にあることに留意してください。
ルールは、
- 強気トレンドでは、遅行は常にローソク足の上にある
- 弱気トレンドでは、遅行はローソク足の下にある
またトレンド相場が存在するには、遅行線が前部にあるローソク足との距離を空ける必要があります。その空間が狭まるほど、トレンドが弱くなります。
言い換えると、もし遅行線にローソク足に近づく力があれば、トレンド相場が弱まるということです。
同じUSD/CADの日足チャートを見てみましょう。強気トレンドが分かりますか?
強気トレンドが持続する限り、遅行線はローソク足から適度な距離を保っていました。しかし、その距離が縮まった瞬間、強気トレンドが消え、トレンドが弱まり、結果的に強気を乗り越えました。
力強い支持・抵抗としての遅行線
先に触れたように、遅行線は力強い支持・抵抗レベルの素晴らしい指標としても機能します。支持・抵抗として一目均衡表の他の要素を使うため、考え方は一緒です。
USD/CADの例では、チャートの左側に、遅行線が下落のたびに非常に大きな支持を見つけます。よって、現在価格は支持を見つけ、トレーダーはロング側に追加する素晴らしい部分として、力強いレベルを使いました。
遅行線の前部に一目均衡表のさらなる要素が来るほど、支持・抵抗レベルが強力になります。さらに、時間枠が長いほど、そのレベルが強力になります。
結論
一目均衡表で取引することは、精通したトレーダーにあらゆる要素を少しずつ与えてくれます。将来の支持・抵抗レベルを示しますが、過去のものも示してくれます。
この記事は、一目均衡表を使った取引方法の説明を完了させるためのものです。これまでお見せした全ての取引戦略は、一緒に使用するのがベストです。
実際に、多くのトレーダーが一目均衡表のみを使用しました。なぜなら、現在・過去・将来の市況の全景を見せてくれるからです。これをファンダメンタル分析やニュース解釈と組み合わせることで、日々の外為市場に何が起こっているのかという完結した構図を提供してくれます。
日本式ローソク足とともに、西洋世界で存在を知られていなかった一目均衡表は、テクニカル分析に新しいアプローチをもたらしました。一目均衡表がFX取引にもたらす自然でストレートな解釈に、多くの人々が依然として驚いています。