保ち合いパターンでのトライアングル
トライアングルの形成は、市場が時間をかける際に好む方法です。FX取引では例外的にしばしば出現するため、通貨売買に関わる誰にとっても、適切な理解が必須となります。
市場は次の上下変動の前に、エネルギーを構築します。FX取引では、通貨ペアは様々な理由、つまりテクニカルとファンダメンタルの理由から動きます。
テクニカル分析が方向を示すのに対し、ファンダメンタル分析は市場が動く理由を表す、と言われます。よって、重要な経済情報リリース前には、外為市場は保ち合いに時間を費やします。すると、トライアングルが形成される確率が非常に高くなるのです。
継続パターンでのトライアングル
従来のテクニカル分析パターンの一つに、強力なトレンド期間に継続パターンで現れるトライアングルがあります。なぜなら最強のトレンドであっても、小休止が必要なためです。トライアングルが終わると(ブレイクアウト)、前のトレンドが再開します。
継続パターンのトライアングルで最も大切な2つは、すでにカバーしました。すなわち、上昇トライアングルと下降トライアングルです。一般的に、価格が水平レベルで支持線または抵抗線に重なると、連続して(上昇トライアングルで)支持線(下線)がより高くなるか、(下降トライアングルで)抵抗線(上線)がより低くなるかの形をとってエネルギーを構築し、最後はトライアングルの終焉を迎えて抜け出(ブレイクアウト)します。
最近のUSD/CAD価格動向は、継続パターンでのトライアングルを描いています。下降パターンでないものの、トライアングルが下降に向かい、前と比べると新安値となっています。
最近になって弱気な動きが始まり、トレンドよりも保ち合いにほとんどの時間を費やしました。そして、保ち合いの際に市場が好む方法が、このトライアングルなのです。
この場合、市場はシンメトリー(均整の取れた)トライアングルを形成しますが、トライアングルタイプの詳細については、この取引アカデミーの中級レベルでご説明します。
トレンド市場には、ペナント(三角形保ち合い)も出現します。ペナントは下記の場合のみ、上記のUSD/CADトライアングルのようになります。
- 強気トレンドで形成する
- 保ち合いにそこまで時間を割かない
- ブレイクアウトがより強力
同じUSD/CAD時間枠では、シンメトリートライアングルの直前にペナント形成が見られます。強気トレンドの間は、市場はしばし小休止となります。
これは下記のような理由によります。
- - アジア市場がオープンし、ロンドン市場が始まるまでは、一般的にほとんど動きがみられない
- - 重要な経済情報リリース前に、市場が小休止する
ペナントには予想される動きもあります。市場がすることは、ペナント形成に先がけて縦の動きを調整し、価格が上昇していく瞬間から突き抜けていくことです。
そこに届くと、ペナントの「仕事」である継続パターンが終わります。本来、長期取引のストップロスは、ペナントの最下ポイントで設定されます。
ペナントは、継続パターンの他のトライアングルが出現するときよりも、より強いトレンドのときに形成されます。しかし、これは異なる取引ルール一式を携えた、市場の保ち合いのただの他の形成です。
エリオット波動理論のトライアングル
取引アカデミーではこれまでのところ、エリオット波動理論の基礎をカバーしています。再度、下記に主要ポイントを挙げます。
- エリオットは市場の動きを、衝撃波と修正波に分けた
- 衝撃波と修正波は、サイクルを形成する
- 市場は、さまざまな度合いで複数のサイクルをつくる
- 衝撃波は数字で分類される
- 修正波は文字で分類される
エリオットは、トライアングルを非常に強調しています。トライアングルがエリオット理論の背後にある礎だ、と多くの人が考えています。
そして、それは良い理由からです。エリオット波動理論は、トライアングルを保ち合いパターンだけではなく、逆転パターンとしても扱う唯一の理論だからです。
そのため、FX取引の世界における変動に完璧にフィットするのです。エリオットは保ち合い、または修正に非常に重点を置きました。
FX取引では他の金融市場より、価格が衝撃波よりも修正波に長く時間をかけます。
上記はEUR/USD日足チャートです。3年間、このペアは狭い水準でただ保ち合いの状態にあります。時間枠のためにレンジが著しいですが、これは単なるレンジの影響です。
連続して価格の抵抗線(上線部)が下がり、支持線(下線部)が上がると、まず思い浮かぶのがトライアングルです。しかし、エリオットは理論の中で継続パターンとして現れるトライアングルを、下記の二部分だけとしています。
- 衝撃波の第四波
- ジグザグのb波
この記事の冒頭でご説明したことを覚えていますか?市場が保ち合い状態なのは、経済または政治で重要な出来事がある直前です。
この場合のこのタイミングでは、FX取引で2つの主要な出来事が大きな役割を果たしました。
- 英国のブレグジット国民投票
- 米国の大統領選挙
言い換えると、この二つの出来事が終わるまで、EUR/USDペアで誰もチャンスを狙いたがりませんでした。もちろん、投資家とスイングトレーダーの話であって、より狭い時間枠で取引するスキャルパーは含まれていません。
上記は、この2つの出来事がどうトライアングル形成に影響したかです。より大きな見方をすれば、2つの出来事はパターンの一部で、何も特別なことはありません。
しかし、米国のトランプ大統領の当選が決定打となって、下降ブレイクアウトしました。ただし、前のトレンド(トライアングル直前)をよく見ると、弱気になっていることが分かります。
したがって、トライアングルは継続パターンで動きました。そしてエリオット波動理論を使うと、それは衝撃波の第四波またはジグザグのc波だけが可能です。
どちらのケースでも、事情をよく知るトレーダーは、ブレイクアウト直後に市場が逆転すること、または、低度のブレイクアウトが偽物だということを知っていました。
なぜでしょうか?どちらのシナリオでも、価格の下降動向は制限されていました。
衝撃波の第五波がパターンを完了します。よって、価格は弱気トレンドで修正を始めます。ジグザグのc波はジグザグを完了し、価格はジグザグを修正するのです。
では、最終的にどうなるのでしょうか?下記のチャートに、これ以上の説明はいらないでしょう。
FX取引における逆転パターンとしてのトライアングル
トライアングルがトレンドを逆転する将来性を見つけたのは、エリオットが最初でした。エリオットの原理によれば、金融市場の価格がトライアングルパターンから逆転すると、そのトライアングルは複雑な修正の一部となります。
エリオットは複数の複雑な修正を識別し、そのほとんどがトライアングルで終わっていました。よって、トレンド終盤に形成されるトライアングルを見ることによってのみ、衝撃波ではなく、修正波の一部だと分かるのです。
おそらくより大きな時間枠だと、最も関連性のある例が挙げられるでしょう。それでは、EUR/USDペアを再度参照します。
上記の月足チャートでは、2008年にあった米国の金融危機の後にトライアングルの形成が見て取れます。下降ブレイクアウトしているため、金融危機の前は、全体の強気トレンドが衝撃波活動ではなく、修正波活動でなければなりません。
結論
当記事は、FX取引におけるトライアングルを説明した二つ目の記事ですが、これが最終回ではありません。次のセクションでは、異なるタイプのトライアングルとその重要性を、FXトレーダー向けに慎重に分析します。
このようにトライアングル形成の説明に多くの時間を使う理由は、FX取引における頻繁なトライアングル形成によります。FX取引でトレンドを信じたがるトレーダーは多く存在しますが、それは的確ではありません。
トレンドは形成されるものの、短期間であり、保ち合いよりは時間を割きません。そのため、めったに表れないパターンよりは、形成が最も多いパターンを理解することに重点を置きます。
トライアングルに注目すると、トレーダーは当然ながら、どの部位にもトライアングルを発見します。さらに、トライアングルの複雑さを理解する唯一の方法が、エリオット波動理論とそのルールを研究することなのです。