インフレと、なぜそれが外為市場に大切か
インフレは通貨価値に不可欠な役割を果たします。そのため、どんな外為トレーダーであっても、通貨の売買の前にはインフレの影響を考えます。
スキャルパー(一日に複数の取引を行うトレーダー)は、経済ニュースに影響を受けないという人も中にはいます。よって、次の10ピップだけで取引をする人たちには、インフレは問題にならないでしょう。
しかし、それは間違ったアプローチです。インフレはその重要性から、短期間・長期間のどちらの変動にも影響力があるのです。
言うまでもなく、インフレは金融政策を動かします。しかし、FX取引でなぜインフレがそんなに重大なのでしょうか、そして最小限の知識を持ったトレーダーが知るべきことは何なのでしょうか?
FX取引でのインフレ
インフレとは、経済で商品やサービスの価格が変動することです。よって、お金の価値にも強力に関与します。
経済学者は、インフレを消費者側と生産者側の両方から分析します。消費者側では、消費者物価指数(CPI)が毎月発表されます。
これは、商品やサービスの価格変動を消費者側から示すものです。非常に重要で、生産者物価指数(PPI)よりも大切な発表です。
そのため、PPIはFX取引ではほとんど影響がありません。市場がPPIを二番手だとしているので、変動がより少ないのです。
しかし最終的に、PPIは消費者側に伝播しますので、PPIの価値の劇的変化が、トレーダーのポートフォリオ配分を変える結果となる可能性もあります。
この取引アカデミーの前の記事で、FX取引には金利がすべてだと議論しました。中央銀行は、経済の動きと権限をもとに金利を変えます。
しかし、どの中央銀行の権限もインフレを考慮します。実際に、主要な中央銀行のすべて(米国連邦準備制度、欧州中央銀行、イングランド銀行、オーストラリア準備銀行、カナダ銀行、日本銀行など)は、インフレを権限の柱としています。
金利が金融政策のツールを示すのに対し、インフレは中央銀行が金利を変える理由となります。
経験から言うと、高インフレ(別の言葉では価格の上昇)で、中央銀行が金利を上げます。そして金融政策を緊縮し、経済の流動性を促します。
一方でインフレがおさまると、中央銀行は金利を下げ、金融政策を緩めます。安価なお金で経済が氾濫し、商業銀行が人やビジネスに融資をするのを奨励します。
各中央銀行の権限の一部は、経済がうまく軌道に乗り続けるように、インフレのレベルを一定にすることです。社会通念(議論もありますが)では、インフレレベルが2%以下か2%に近づくと、経済成長の調整に役立つとされています。 簡単に言えば、2%前後が、インフレの「通常」レベルであるといえます。
インフレと金融政策
CPIは毎月発表されますが、四半期および会計年度の変化も大切です。こうした変化は金利レベルに影響するので、CPIが発表されるとトレーダーはすぐに反応します。
米国、英国、欧州のCPI発表前になると、FX市場が日ごとに変化するのは当然です。そして予測と実際の価値が異なると、トレーダーはすぐさま行動を起こします。
実際の価値と予測とがかなり異なれば、それだけ反応も大きくなります。取引は予測ゲームであることから、トレーダーはインフレ変化のために中央銀行が金利を変えるのではないか、と見込んでいるのです。
しかし、価格変動は経済のゆがみに苦しみます。面白い関係性に、原油とインフレの関係があります。
原油価格が100ドル超から30ドル周辺に下落すれば、金融市場にショックが波及します。突然(数か月の時間差があるとしても)、世界中でインフレ率が下がるのです。
世界の主要な中央銀行が同じ問題に直面しました。つまり、インフレの欠如です。よって、経済が成長せず、不況に支配されるようになると、デフレスパイラルが起こることもありました。
世界中でデフレ環境を防ぐため、中央銀行が結託しました。安いお金を氾濫させ、革新的な金融政策の全てを尽くして、法定通貨を印刷しました。下記のような政策です。
- 量的緩和。中央銀行が国債を買うプロセスを経て、経済と実質的なお金の印刷(最近では電子的にですが、考えは同じ)を刺激します。米国連邦準備制度、欧州銀行、日本銀行、イングランド銀行、スイス国立銀行や他の銀行は様々な量的緩和を開始し、今日まで続いているところもあります。
- LTRO(長期資産供給オペレーション)。長期資産供給オペレーションは欧州で広く使用され、問題を抱える銀行に欧州中央銀行からの格安ローンを許可しました。のちにその成功から、貸出条件つき長期資産供給オペレーション(TLTRO)に引き継がれました。
ほとんどのケースで、こうした政策は功を奏しました。米国は状況を覆してインフレ率が上がり、インフレ率がターゲットに近づいたことから、連邦準備制度は今では金利を上げています。
欧州でもインフレ率が上がりましたが、米国連邦準備金には遅れをとっています。量的緩和を先細りさせ、レートを通常化し始める議論が始まっています。
そのことは、ユーロ上昇を駆り立てるのに充分でした。2017年中、世界のほぼ全ての通貨に対し、ユーロは高値傾向でした。どうしてか覚えていますか?取引は予測ゲームであり、通常化を始めた欧州中央銀行に目を向けて予測していたトレーダーは、すでにポジションを先取りしていたのです。
消費者物価指数データを解釈する
消費者物価指数は、FX取引では第二の役割があります。大切なのは、米国連邦準備制度と欧州中央銀行の両方のコアCPI(消費者物価指数)です。
この二つを組み合わせると、欧州経済が米国経済とライバルになり、世界最大の経済となります。よって、この二つの中央銀行の動きが外為市場の全金融政策を決定づけます。世界中さまざまな権限のある他国の中央銀行のルートを設定するのです。
コアデータはエネルギー価格、食料、輸送の変化を考慮しません(原油の影響を見てください)。変動が激しすぎて、データを歪めてしまうのです。したがって、中央銀行はこれらを無視する傾向があります。
ですから、コアCPIは、米国連邦準備制度と欧州中央銀行が好むインフレ測定方法であるため、注視すべき経済情報です。
結論
皮肉にも、昨年は中央銀行がインフレを作り出すのに格闘した年でした。金利を不景気レベルにまですべてカットし、さらにそれ以上に行ってしまった中央銀行さえあります。つまり、金利をマイナスにしてしまったのです。
スイスでは今日(2018年)まで、スイス国立銀行が-0.75%に金利を抑えています。明らかにマイナスです。
数年前までは、マイナス金利の概念は珍しいものでした。前例がなく、経済がどう動くか誰にも分らなかったからです。
今日では、マイナス金利が利便性を証明したことで、資本主義経済が一つ以上のツールを持つことを誇りにしています。しかしなぜ、中央銀行がこのような究極の方策を行うのでしょうか?
前例がもっとも役立ちます。両極の例が存在します。
一方で、日本の例があります。二十年間、日本経済はデフレスパイラルに陥っています。簡単に言うと、消費者はあまりお金を使わず、経済が思うように回っていないのです。
これには人口統計学、文化など、多くの要因が影響している可能性があります。しかし経済の観点からは、同じ原理が働くなら、結果も同じはずです。
日本では、うまく機能しませんでした。停滞した経済のため、次世代は希望のない見解を持ち、日本中央銀行は金融政策の観点から、統制が最も困難な権限の一つとなっています。実際、日本中央銀行が「ヘリコプターマネー政策(これは幅広く議論されています。消費を増やし次の経済へ飛躍するため、ヘリコプターからお金をばら撒くように、無料で人々お金を供給すること)」のような前例のない領域に踏み込まなければ、使用できるツールがありません。
他の究極例が、ベネズエラです。6000%ものインフレに傾き、お金の価値が一時間で消失します。
デフレとベネズエラの経験の間で、中央銀行は経済変化に順応すべく、金利を設定します。中央銀行は本格的に、お金の価値を設定し、それがFX取引にとって重要な全てなのです。