FX取引の背後にある隠れたコスト
仲介業者により、オンラインFX取引が個人トレーダーにとって手の届くものになりました。最も流動的な市場、すなわち銀行間市場へのアクセスが可能になったのです。
ブローカーはトレーダーと提携し、両者は市場活動という同じ関心を共有します。トレーダーが活発になるほど、ブローカーの利益は多くなります。
したがって、利益を得ることはトレーダーの関心だけでなく、ブローカーのためにでもあります。両者の利害が同じ方向に一致したとき、信頼は長く、安定した関係に繋がります。
しかし、仲介業者は慈善団体ではありません。サービスを提供し、料金を必要とします。
トレーダーはそのことを承知しています。結局のところ、映画館に行き、映画が無料であることを期待するようなものでしょう。
ブローカーからの手数料や料金に関する全ては、コストです。トレーダーはこれらのコストを取引口座から直接支払うことになります。
しかし、FX取引では、個人トレーダーに別のコストがかかります。最初の段階では目立ちませんが、取引口座の最終的な収益に影響を与えるコストのことです。
変動スプレッド
スプレッドは売値と買値の差を表します。または、ある人が売ることができる価格と、買うことのできる価格の差額を示します。
取引を終えるとき、終値は最初のポジションとは反対のものを表します。仮に取引がロングサイド(トレーダーは買い手)であった場合、取引は売値からクローズするでしょう。一方、ショートサイド(トレーダーは売り手)であった場合は、取引は買値からクローズするでしょう。
始値と終値の差が、利益または損失を表します。ロングの取引では、通貨ペアの価格が上昇した場合、トレーダーは利益を上げます。ショートの取引では、もし市場が上昇すると、トレーダーは損失を被ります。
トレーダーが利益を得た場合には、スプレッドは差し引かれるコストになります。トレーダーが損失を被った場合は、スプレッドは実際の損失に追加されることになります。
すべての場合において、スプレッドはブローカーに属しています。ブローカーは変動スプレッドと固定スプレッドを提供しており、スプレッドは取引中に増える場合と増えない場合があります。
おおざっぱに言うと、スプレッドが小さいほど、ブローカーの取り分は少なくなります。スプレッドが広範であるほど、料金は高くなります。
もしトレーダーが固定スプレッドを提供するブローカーとの取引を選択すると、平均してスプレッドが広くなります。トレーダーは全ての取引に対して支払う料金は高くなりますが、高いボラティリティレベルから取引口座を保護できます。
変動スプレッドには、善し悪しの両方があります。一方で、ボラティリティがほとんどない、または全くないときには、スプレッドはタイトになります。しかし、他方で、特に経済に関するニュースが発表されると、激しく広がります。
さらに、流動性が弱くなるロールオーバーの間は、スプレッドは耐え難いものになります。USD/CADペアのような主要ペアであっても、取引日の終わりには、売値と買値は大きく異なります。
それはトレーダーが短い時間枠でトレーリングストップを使用すると大きな問題になります。または、利益を保護するためのストップロスが狭い場合もです。本当のところ、実際の市場はそれほど速くは動かず、そのブローカーのスプレッドだけが流動性に対処できませんでした。
FX取引におけるスワップ
毎日のロールオーバーについて言えば、考慮すべきもう一つのコストがスワップです。スワップは、翌日のポジションをオープンにしておくためのオーバーナイト金利です。
金利はプラス、またはマイナスにになり、トレーダーの収入またはコストを表します。ほとんどの通貨はマイナス金利(ユーロ、スイスフラン、日本円)であり、残りの通貨の金利はゼロに近いため、スワップはマイナスになる傾向があります。
したがって、ほとんどのペアでは、スワップまたは金利がマイナスであり、翌日の開始時には取引口座から消えてしまいます。トレーダーは、取引の収益性を確定する際にもこのコストを差し引かなければなりません。
しかし、プラスのスワップの場合、それは取引の収益性を高めるでしょう。
この現象は、中央銀行のオーバーナイト預託機関に似ています。民間金融機関は、中央銀行に準備金を預ける傾向があります。
このため、民間金融機関は利子を受け取ります。これは中央銀行が流動性を市場から失わせたいときに起こります。市場の状態を引き締めたいためです。
しかし、インフレが低下し、中央銀行が行動する必要がある場合、マイナス金利を課すことさえあります。狙いは、民間金融機関が人々や企業に資金を貸し出すよう促し、経済が改善し始めることです。
中東のような、世界の一部地域では、宗教はトレーダーが自分たちの所有物に対して利子を受け取ることを認めていません。FXブローカーはどうしたのでしょうか?ブローカーは順応しました。つまり、スワップフリーの口座も存在するのです。
銀行手数料
FX取引をする前に、いくらかの手数料は送金された資金か、または銀行口座から差し引かれます。それは口座に資金を入れる方法に依ります。
通常、個人トレーダーには忍耐力がほとんどありません。大きな時間枠でサイクル見て、価格が特定のレベルに達するのを待つ忍耐力をもちあわせている個人トレーダーは少数です。ほとんどのトレーダーが市場で取引をし、ストップロス注文を使用しません。
取引口座に資金を入れる際にも、同じ態度が適用されます。クレジットカードを使用すれば高い費用がかかりますが、一番時間がかからないため、望ましい方法です。
一部のブローカーでは、クレジットカードで入金する際に巨額な料金がかかり、このような料金は送金した総額から消えていきます。さらに、通貨が異なる場合、為替レートもブローカーに有利に働きます。
資金を電子送金するときは、もっと時間がかかります。機会費用はトレーダーを動かすものです。
そのようなことから、トレーダーはいつも、ブローカーの銀行口座に資金が届くまでの間に何かを逃してしまうという思い込みのもとで生活しています。現実は異なりますが、それがFX取引における人間性の役割です。
見逃すことへの不安(FOMO: Fear of missing out)も、決定的な要因です。EUR/USDレートの最後の急上昇を考えてみて下さい。
2017年、FX市場で予定されていた取引は、EUR/USDのペアで長期にわたりました。このペアは1.05から1.20へ大幅に上昇しました。そして、それに約6カ月かかりました。
強気のトレーダーにとって、ユーロは依然としてドルに対し値上がりしていくことを確信させ、逃すことへの不安(FOMO: Fear of missing out)が、「大きな動き」を見逃すまいという恐れがあるというだけの理由で、トレーダーをせき立て、どんなコストも捨てるほどにまでさせるのです。
休眠口座手数料
一部のブローカー(全てではありません!)は、休眠口座手数料を請求します。このことは特に大きな仲介業者に当てはまります。
ブローカーは、アクティブなトレーダーを必要とし、どんなトレーダーでも良い訳ではないことを忘れないでください。よって、時々、取引活動を刺激するためだけに、取引量をベースにしたインセンティブを提供することもあります(例えば、実際の市場で特定の取引量になった場合に賞金を獲得する)。
一定期間内に取引活動がない場合、ブローカーは休眠口座手数料を請求します。言い換えれば、取引するか、休眠口座手数料を支払うか、あるいは、取引口座を閉鎖するかのいずれかです。
結論
FX取引を始める前に、トレーダーは全ての関連費用を紙か、文書に書き留めなければなりません。
こういった費用を知っておけば、取引戦略全体に影響がでます。例えば、取引ごとに10ピップを目標にするスキャルピングスキャルピング戦略(スキャルピングとは最小利益のために取引日に何度も取引を行う)を実施している場合、スプレッドが重要になります。単に1ピップ増加するだけで、潜在的利益の10%が奪い取られてしまいます。
また、取引量が増加するとコストが上昇する傾向があります。このため、取引口座を拡大するときは、全てが釣り合った状態にすることが理にかなっています。