エリオット波動理論の基礎
チャート分析やテクニカル分析は、トレーダーが予測するのに役立つツール一式からなります。今日のFX取引には、通貨ペアをチャート分析する際に新旧の概念を適用できる機会があり、そのほとんどはすでに取引プラットフォームに搭載されています。
どんなプラットフォームも、トレーダーが通貨ペアをチャート分析するために使うテクニカル指標(オシレーター、トレンド指標)や他のテクニカルツールを提供しています。搭載ツールに加えて、トレーダーは通貨ペアが時間とともに発展していく方法を分析するための取引理論を使用します。
エリオット波動理論は、最も強力な予測理論の一つとして際立っています。ラルフ・N・エリオットによって1900年代初頭に開発されたエリオット理論は、市場サイクルを見つめ、理論的なプロセスでそれらを解釈します。
この波動理論の長所は、人間の行動に対応しているところです。エリオットは、市場は理由があって動き、その理由は需要と供給の結果ではなく、人間の行動によるものだという仮説の下に波動理論を作りました。
エリオット理論のように、人間の感情を組み込んだ理論は他にありません。そのため、取引には比類ない方法でアプローチをします。
取引パフォーマンスが収益性のある戦略以上のものにかかっていることは、私たち全員が知っています。市場心理、貪欲さと恐れ、忍耐、鍛錬…これら全てが、FX取引の成功に貢献するのです。
ラルフ・N・エリオットは、これまで見たことがない手法で市場心理をとらえる解決法を見つけた、と主張しました。4分の3世紀経っても、依然として、エリオット波動理論は規律のある方法で市場心理を扱う理論の一つです。
会計士だったエリオットは病に伏し、休養を余儀なくされました。エリオットはその時間を株式市場の研究に費やし、発見した全パターンを文書に記録しました。
それからというもの、エリオットは現存する中で最も素晴らしい取引理論の一つを構築するのに手を止めることはありませんでした。晩年に自分の理論の最終版を出版した際、エリオットは「宇宙の秘密」を発見したと主張しました。
エリオット波動理論の説明
明確なルール一式をもとに、この理論は一見すると最もシンプルに見えます。エリオットによれば、投資家の感情は悲観と楽観のはざまで動きます。
そうすると、市場はエリオット理論の柱となる波動またはパターンを形成します。波動はサイクルを形成し、正確に市場を分析するには、トレーダーは異なる度合いで様々なサイクルを解釈しなければなりません。
サイクルには二つのフェーズがあります。衝撃波(インパルス)と修正波(コレクティブ)です。衝撃波は市場が5連続、または低度の波で上下を形成します。
修正波は低度の3連続の波で、先に起きた上下を修正します。エリオットのサイクルは下記のように見えます。
かなりシンプルではないでしょうか?上昇が衝撃波で、下降が修正波です。したがって、二つのフェーズがサイクルを作り出します。
エリオットの強迫観念は、できる限り物事を簡略化することでした。実に多くのパターンに遭遇し、全てを定義するのに明確なルール設定が必要だったからです。
最初の作業は、サイクルを衝撃波と修正波に分けることでした。次に、下記のように衝撃波の活動を示す番号と、修正波を示す文字をふりました。
エリオット理論を使うトレーダーが波動を「数える」のは、こうした理由からです。最後に、完成したサイクルは、下記のように連続した番号と文字がつけられています。
波動にラベル付けをすることは、エリオットの大発見でした。この瞬間から、エリオット波動分析を見るといつでも、ラベル付けされた数字や文字を見るだけで、市場が衝撃波なのか修正波の状態なのか分かるはずです。
FX取引では大部分が持みあい相場を見せることから、おそらく修正波が形成されることがほとんどでしょう。ただ取引アカデミーの後のほうで、エリオット波動理論のより複雑な概念を扱った際には、さらに詳細をご説明します。
今のところ、エリオット波動理論の複雑さを予期するものは何もありません。価格変動にラベルを付ける以上に難しいことなどあるでしょうか?
まさにこのシンプルさこそが、複雑な問題につながっています。エリオットは衝撃波の中にさえ、二つの修正波(第二波と第四波)を見つけ出したのです。
そして修正フェーズの中にさえも、低度の波の一部として、または違うサイクルとして、衝撃波の活動がある可能性があります。先ほどお見せしたエリオットサイクルは、大きい度合いで、衝撃波の第一波と第二波を反映しているにすぎないかもしれません。
2色は異なるサイクルを示しています。よって、青の第一波は低度(赤)の5波があり、異なるサイクルのものです。
そして、青の第二波は前の衝撃波を修正した3つの波動の動きから構成されています。さらに複雑なことに、各サイクルのセグメントには同じ原理が適用されます。つまり、
- 赤の第一波には低度の5波の構成がある
- 赤の第二波は前の第一波を修正する
- 赤の第三波には低度の5波の構成がある
- 赤の第四波は前の第三波を修正する
- 赤の第五波には低度の5波の構成があり、衝撃波を完了させる
- 赤のa,b,cは衝撃波の全体を修正する
全サイクルは、下記のようにより大きな度合いの青のaとbになり得ます。
エリオットは異なる度合いのさまざまなサイクルを特定し、当時はパソコンが存在しなかったので、彼の偉業は本当に大きなものでした。今日では、どんなFX取引プラットフォームでも、通貨ペア分析のため、様々な時間枠を提供しています。
したがって、トレーダーは異なるサイクルを分析して、より大きなサイクルをさらに簡単に見分けます。トップダウン(アプローチ)分析と呼ばれるプロセスで、トレーダーはより大きな時間枠(月足チャート)から始め、時間足チャートにいたるまで波にラベル付けをします。
トレーダーは月の時間枠分析が終わったら週の時間枠へ、週が終わったら日の時間枠へ、などというように続けていきます。最終的に、エリオット波動理論は通貨ペアの全ての動きを「地図化」し、結果的に将来の予測となるのです。
衝撃波と修正波に分けるという純粋なコンセプトから、この理論は各パターンのルールに写ります。エリオットはシンプルなものから複雑なものへ、3種類の衝撃波と多様な修正波があるのを見つけました。
この取引アカデミーでは全てをカバーしますが、今のところは、この素晴らしい理論の基礎を理解するだけで充分です。
最終的に、複雑な数え方では下記のようになります。現時点では、衝撃波を示している数字と、修正波を描いている文字を使うエリオットの数え方だけを分かっておきましょう。
結論
その複雑さにも関わらず、エリオット波動理論には多くの支持者がいます。波を数えるのは時間がかかるプロセスで、適格なトップダウン分析を完了するまで、何週間もかかる可能性があります。
FX取引では、主な問題は想定外の情報源からやってきます。つまりデータの有用性です。どんな取引プラットフォームでも開いてみて、たとえばGBP/USDのような通貨ペアに注目すると、1990年代からのデータしかないことが分かるでしょう。
しかし、GBPとUSDはそれ以前にも存在していたことは分かっています。よって、エリオット波動理論を使って適切なトップダウン分析を行うには、トレーダーは取引プラットフォームの時間枠を使う前に、歴史的データを見つけて解釈しなければなりません。
エリオット波動理論は何十年も昔、FX取引さえも存在する前に開発されたコンセプトでありながら、その原理は現在の市場においても有効です。なぜなら人間の反応を基本としているので、分析のための歴史的データがあれば、この理論はどんな市場も追跡できるからです。
取引アカデミーをさらに進んでいけば、エリオット理論の最も大切な局面をカバーしつつ、さらに詳細に見ていくことになります。今のところは、この方法が市場を解釈する最良な方法の一つにも関わらず、ほとんどの人が真にその力を理解していない方法の一つだと認識しておいてください。