FX取引:上級レベル

上級
Trading101
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Lectures 20 レッスン
Duration 20 時間

世界の準備金通貨としての米ドル

FXダッシュボードの柱として、米ドルはどんなFX取引戦略においても不可欠です。米ドルは、FX業者の提供をメジャー通貨とクロス通貨に分けます。つまり、通貨ペアに米ドルが入っているか、そうでないかです。

FX取引での米ドルの重要性は明白ですが、なぜそうなのかを知っているトレーダーはごく少数です。今日の金融システムで、なぜ米ドルがこれほど重要なのか、なぜ今日の世界が、全世界が米国の金融政策で何が起こっているか注目するほどドル化されているのでしょうか?

この記事では、なぜ米ドルが世界の準備金通貨となっているか、そしてそのすべてが始まったのはいつか、に注目します。さらに、米ドルの試練は何かということと、Fed(連邦準備制度)がどのようにバランスをとって、米ドルの価値を管理しているかも見ていきます。

ブレトンウッズ会議

すべては1944年、世界の国家が米国で会合を開いたときに始まりました。ブレトンウッズ会議は、第二次世界大戦後の国際的な金融秩序を再建する目的で開かれました。

欧州のほとんどの国と日本が荒廃し、米国はこの間ずっと経済的成長の恩恵を受けていました。さらに戦争が理由で、多くの国家が安全対策として米国に金を送っていました。

金が送られてこなくても、米国は当時、大量の金準備を保有していました。ブレトンウッズ会議が行われる前に、ほとんどの国の経済が金本位制であったため、このことはブレトンウッズ交渉の間で重要でした。

実際、中央銀行の金庫室にある金の量で、流通通貨を裏付けたということです。言い換えれば、金の価値によって通貨を換金するという誓約がされていました。

しかし、ますます多くの国が、これ以上そうすることができないと気づきました。戦争が全てを変えてしまったのです。

ブレトンウッズ協定が有効化され、各国は米ドルの為替レートを金で固定することに同意しました。よって米国以外の国々は、自国通貨のレートを金の代わりに米ドルに固定しました。そして、米ドルは金に固定されました。

これは信頼がかかった大規模なゲームで、多くの国家がそれを渋っていました。戦争で焼け野原となり、自国経済を再建する資金の必要性にかられて、米国の条件をのんだのです。

そうして、世界の準備金通貨としての米ドルは道を歩み始めました。

ニクソンショック

結局、その協定は単なる約束に過ぎませんでした。2、30年間は真の約束でしたが、それ以降はそうでなくなりました。

ベトナム戦争が長期化して祖国での高まる圧力に直面し、ニクソン政権は約束を破らざるを得なくなりました。ニクソン政権は1971年にはドルをと金の固定比率の約束を破り、世界中に衝撃の波紋を広げました。

各国は国内でインフレと闘わねばならず、米ドルと引き換えに金を求め始めました。一方で米国は、金庫室の中の金を枯渇させたくなかったので、ブレトンウッズ協定を破る判断を下しました。

突如として、世界中の国々は米ドルが金に交換できないと知ることになりました。

21世紀の米ドル

そのときから、世界はドル化されることになりました。今日の金融システムにおける米ドルの重要性を知るには、なぜ世界通貨になることができるのかを説明する必要があります。世界中で受け入れられるから世界通貨なのです。

米ドル、ユーロ、日本円は最も著名な世界通貨です。しかし、世界のさまざまな中央銀行が保有する外貨準備金に関しては、米ドルが最も多くのシェアを占めます。

世界の外貨準備金の60パーセント以上が米ドルです。ある国とその通貨を考えてください。そして、ほとんどが米ドルで外貨準備金を築きあげていることを思い描いてみてください。

このため、世界中からドルに対する健全な需要が生じ、Fed(連邦準備制度)を最も強力な中央銀行になっています。

非常に興味深いのは、公式の電子通貨準備金だけが注目されますが、硬貨または紙幣はそれと同等のパーセンテージです。全ての米ドル紙幣の60パーセント以上が米国外にあり、特にロシアとラテンアメリカにあります。

自国通貨、あるいは自国の中央銀行がインフレと互角に闘える能力があるとは思われていないため、自国のインフレと闘うための価値の保存として、米ドルが使われています。ベネズエラまたはアルゼンチンと、この国々のインフレスパイラルを考えてみてください。

もし自国通貨で貯蓄し続けたら、蓄えは事実上、一夜にして消えてなくなるでしょう。代わりに、自国の経済的な出来事に関わらず価値を保つ米ドルを買うために、自国通貨を使います。

多くの国々は、自国通貨レートを米ドルに固定するドルペグ制を選んでいます。または、米ドルの安定性に引かれ、自国通貨を狭い幅で変動させています。

FX取引では、80%を超える取引処理が米ドル関連のペアで行われているため、ここでも米ドルがニュースの見出しを独占します。

それに加え、コモディティー(特に原油)は、世界中の経済成長における原動力です。キッシンジャーのサウジアラビアとの協定(サウジは、地域の米国軍隊による保護と引き換えに、原油を米ドルで売ることに同意した)以来、米ドルは石油取引において支配的通貨となりました。

その協定の後、サウジアラビアは他のOPEC(アラブ石油国輸出機構)諸国にも協定を押しつけたので、まもなく、全ての原油の売買には米ドルだけが使われるようになりました。

ある国がその協定を変えようとすると(例:イラクは原油売却を米ドルからユーロに切り替えた)、その国はすぐさま侵略され、原油の出荷が米国に戻るという推測さえあります。

大事なことを付け足しますが、世界の負債の3分の1以上が米ドルで発行されています。商業銀行や他の機関が、その国の国民と企業だけでなく、海外の国家にむけても負債を米ドルで発行しています。

こうした全ての要素が米ドルの絶えない需要をつくりだし、現行の金融システムでの支配的な役割を強調しています。

結論

ここ何十年も、米国は世界の準備金通貨を持つことで途方もない恩恵を受けていました。ある意味、世界最大の経済国について話しているのですから、それは妥当なことです。

しかし絶え間ない米ドル需要は、米国が莫大な赤字を常に垂れ流せているという意味での利益ももたらします。財政規律の欠如が米ドルの価値を弱らせ、突然、自分たちの準備金が、最初に計画していたよりずっと価値が減るということを、多くの人が恐れています。

米国は、世界の準備金を保有の力に気づいています。今日の戦争、そしてますます増えていく将来の戦争は、もはや戦場で戦うのではなく、閉じた扉の向こうで、特定の国・地域で米ドルの引き締めまたは緩和を行う財務省およびFedを相手にしたものです。

ある国の経済を世界の準備金と相いれないようにして跪かせるのは簡単です。突如として人々は動揺し、国際的な金融支援がなくなったことを目の当たりにし、通常は無血の政権交代、という結末になります。

要約すると、米国のFedは自国通貨だけでなく、世界の準備金通貨の金利と金融政策を設定します。そうする際に、Fedは自国経済だけでなく世界経済も考慮します。

米ドルが世界の準備金通貨である限り、発行者に莫大な利益をもたらします。世界の準備金通貨として、米ドルが覆されることはあり得るでしょうか?

歴史は、米ドルが英ポンドの後を継いだことを証明しています。では、米ドルにとって代わる次の通貨は何になるのでしょうか?