FX取引:上級レベル

上級
Trading101
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Lectures 20 レッスン
Duration 20 時間

取引アカウントのヘッジのかけ方

高度な資金運用テクニックの一部として、ヘッジ取引はFX取引アカウントのリスクを最小限にすることを言います。さらに正確に言うと、通貨ペア、通貨または同様に相互関係のある商品を取引する際に、エクスポージャー(ポートフォリオ内でリスクにさらされている部分)を減少させ、リスクを軽減させることです。

ヘッジ取引の種類と実際のFX取引アカウントのヘッジ方法の詳細に移る前に、なぜヘッジ取引の必要性が生じるかを定義しなければなりません。また、高度の資金運用管理の一部でありながら、ヘッジ取引はリスクを負うアプローチとみなされています。これは皮肉なことではないでしょうか?

世界のある場所、正確には米国ですが、ヘッジ取引は危険なビジネスです。非常に危険なため、金融規制機関である証券取引委員会(SEC)が禁止を決議したほどです。

よって、SECはFX取引アカウントからヘッジ取引関連の商品を除外するよう、業者に強要しました。そうした制限の理由は、またも人間の性質によるものです。

ヘッジ取引の資金運用側面が一つですが、個人トレーダーのほとんどがそれに気づいていません。代わりにほとんどの個人トレーダーが、資金を失う恐れからヘッジ取引を行います。

SECが取引アカウントからヘッジ取引を除外したことで、FX業者が直面した問題が、ヘッジ取引と同様の目的で提供できる新しい取引プラットフォームを探すことだったのは自然なことです。幸運にもMT5がちょうど開発されたときで、ヘッジ取引の問題点と、SECから課された別の規制である先入先出法(FIFO)の両方を解決する明確な意図を持って構成されていました。

この先入先出法によれば、トレーダーは取引をオープンした順にのみクローズできます。取引戦略のいくつかにとっては呪いとなる一方、将来的な損失に制限をかけるため、個人トレーダーが行う全体的な資金運用には祝福となります。

しかしながら、ヘッジ取引に関してここまでお話ししたことは「影の側面」のように見えます。または、ファンダメンタル分析のヘッジテクニックのみ、すなわち、同じ取引アカウントで反対方向に同じ取引を行うことのみのように見えます。

しかし、こうしたことは、資金運用の柱としてここで言及しているヘッジ取引ではありません。少なくとも、それが全てではないのです。

ヘッジ取引のタイプ

取引戦略と一体化しているヘッジ取引には、多くの種類があります。資金運用テクニックとしてのヘッジ取引は、取引戦略に大いにかかわる多くの機会を提供しています。

例えば、この取引アカデミーでは複数のテクニカル分析戦略を取り上げてきました。ダイバージェンス、移動平均、エリオット波動、トライアングル取引などです。

異なる時間枠で、同じ通貨ペアを同じパターンで取引できない、という人は誰もいません。上昇・下降のウェッジ(フラッグパターンで先細りしていく形)を例に取ります。

上昇ウェッジは下降していき、下降ウェッジは上昇していくことは分かっています。または、弱気・強気とも言います。

月足チャートで上昇ウェッジパターンを取引し、同時に5分足チャートで下降ウェッジパターンを取引したらどうでしょうか?それも同じ通貨ペアで、です。

上の図はEUR/USDの月足チャートです。あるタイミングでは素晴らしい上昇ウェッジを形成し、近年で最大のショート取引チャンスの一つを提供しています。

しかし時間枠が大きいので、違った取引スタイルも存在します。例えば、EUR/USDでショートするのが高かった場合。一晩ポジションをオープンしておくとマイナススワップとなり、取引日の終わりに毎回、取引アカウント残高から少額が差し引かれることになります。

よって、トレーダーは取引コストをカバーしたがります。上昇ウェッジ設定は1.23より少額を要求し、この時間枠に従うと、そこに届くまで時間が必要でした。

そこに届いたものの、2年ほどかかりました。その間に発生したコストはどうすべきでしょうか?

ヘッジ取引が一つの答えです。または元の取引と逆方向に、短い時間軸(月足、日足、週足)か、週足以上の短い時間軸で取引することです。

この2年間で、下降ウェッジが時間足か5分足チャートで形成されるのを想像するのは難しいことでしょうか?もしそうなら、なぜ利益を上げず、その利益を使って、さらに大規模な取引である最初の投資を生かしておくコストをカバーしないのでしょうか?

この例は、取引戦略・資金運用ツール・取引アカウントの収支を合わせるツールとして、ヘッジ取引の必要性を説明するためのものです。

FX取引のフルヘッジ

これはSECが禁止している事項です。つまり、同じ通貨ペアを同時に逆方向に取引することです。しかしフルヘッジとは、同じ通貨ペアを同時に、異なる方向で同じ量取引することを言います。

それをすると、取引アカウントは「凍結」されます。市場が上昇・下降しようが、動きは表示されず、資産は同じままです。

しかしそのうちに、ドローダウンのマイナススワップで、トレーダーがフルヘッジから身を引かざるを得なくなります。

フルヘッジは自暴自棄な状態からもたらされるため、リスクがあるとみなされています。前述のように、トレーダーは損切りを恐れるために、ほとんどの場合でフルヘッジ取引に従事してしまいます。そして次に何が起こるか見る時間を稼ごうと、ヘッジをかけるのです。

しかしフルヘッジは、誰もが分析で間違う可能性があるために正しいアプローチを示しています。ポジションにヘッジをかけることで、マージンから解放されます。次に、トレーダーはそのフリーマージン分で他の何かを取引し、そのプロセス上で、ヘッジ取引で負った手数料や他の費用をおぎなうのです。

最後に、利益が増えるほど、トレーダーは信頼が再建するまで、ロングもショートも同じように、だんだんと条件付きでヘッジ取引をクローズしていきます。

ここでヘッジ取引ではなく、全ポジションを同じくクローズできる、と異を唱える人がいるかもしれません。それは正しいですが、そうすればトレーダーはお金より貴重なもの、つまり信頼を失います。

FX取引の部分ヘッジ取引

部分ヘッジ取引とは、一部のリスクをとることを言います。取引では例えば、1方向では1ロット、そして半ロットを他の方向で行います。

これで辻褄が合うのは、取引が同時にされていない場合のみです。よって、取引日での異なる水準や瞬間では、異なるチャンスがもたらされることになります。

SECの要求にも関わらず、トレーダーは米国でヘッジ取引を行っていることに注意してください。明確な解決法は、複数の業者の取引アカウントを開設し、そのポートフォリオを等しく分割することです。この方法だと、トレーダーは一業者あたりの資金にかかるリスクを分散し、同じ通貨ペアで両方の側から簡単に取引ができます。

スマートヘッジ取引

このアプローチは、相互関係のある商品を取引することを言います。米ドルを例に挙げましょう。

もし一方が米ドルで一般的に強気であり、EUR/USDペアでも強気な場合、市場へのアプローチ方法に問題があります。両方のシナリオが正しいと証明するのは、単に時間の問題かもしれません。

例えば、EUR/USDは翌月に高値で取引され、米ドル指標が高値に導くまで、その水準で持ち合いとなるかもしれません。よってトレーダーの判断は正しかったのですが、このFX取引シナリオではタイミングのみが異なりました。

相互関係にある商品を取引することによって、トレーダーは取引アカウントのリスクを減少させます。ロングポジションのEUR/USDが1ロットで、ショートポジションのUSD/CADが半ロットの場合はどうでしょうか?

一般的に逆相関の商品では、変動は米ドルの重要な経済イベントに先がけてレバレッジを加える方法で、取引アカウントの均衡を測ります。

結論

このように数多くの例を使用した理由は、ヘッジ取引が戦略に沿っていれば、理にかなっていることを示すためです。ポジションをオープンするためにただ売買をするのでは、どこにも行きつくことができません。

投機の芸術性は、トレーダーが損切りをして利益を上げる最短の方法を見つけるのに役立つヒントや技で一杯です。それが資金運用の一部なのです。